【書籍レビュー】『口に関するアンケート』――“口”をめぐる日常が反転する、不気味な短編集

【書籍レビュー】『口に関するアンケート』――“口”をめぐる日常が反転する、不気味な短編集

カテゴリ: ホラー短編集/出版: 2024年(宝島社ランキング第4位)

作品概要

背筋による『口に関するアンケート』は、「このホラーがすごい!2025年版」で国内編第4位に選ばれた短編集です。
作者・背筋はWEB発ホラーの旗手として知られ、過去作『近畿地方のある場所について』で一躍脚光を浴びました。
本作では「口」をテーマに、人間の身体や行動のごく当たり前の要素が、いかに恐怖へと転じるかを追究しています。

あらすじと構成(ネタバレなし)

短編集に収められた物語はいずれも「口」をキーワードに展開します。
例えば、学校で実施されたアンケート調査の回答欄に記された“意味不明の文字列”から始まる怪談。
あるいは、口に出した言葉が現実を歪めていく話。さらに、口を閉ざしたままの死体が何かを語りかけてくる場面も描かれます。
共通するのは「口が持つコミュニケーション機能」と「口が生む生理的な嫌悪」が、恐怖の源として表現されている点です。

恐怖の仕掛け

本作で背筋が提示する恐怖は、派手な怪異ではなく“日常の異常なズレ”です。
口は食べる、話す、笑うといった生活の根幹に関わる器官。その口がいつもと違う意味を持った瞬間、日常は一気に崩壊します。

  • 言葉の呪い:口にした瞬間、現実が歪んでいく構造。発話が恐怖のトリガーとなる。
  • 沈黙の恐怖:語られない、声を失った存在が逆に不気味さを増幅する。
  • 生理的嫌悪:口の中という生々しい描写が、読者の身体感覚に直接訴える。

読後感と意義

『口に関するアンケート』は、背筋が得意とする“ありふれた日常の違和感”をさらに深化させた短編集です。
読み終えると、普段の会話や食事すらも奇妙な感覚を帯び、「口」という存在がいかに不気味でコントロール不能なものかを思い知らされます。
短編ならではの凝縮された恐怖が積み重なり、全体を通して読むと一冊のテーマ性が際立つ構成になっています。
本作は「日常と身体」をホラーの題材にする新しい潮流を代表する作品だといえるでしょう。

蒼井カナタのアイコン
🌙 蒼井カナタ

「“口にする”って当たり前の行為なのに…この本を読んでから、言葉を発すること自体が怖くなったよ」

黒咲ミユのアイコン
🦇 黒咲ミユ

「口は生きるために必要なのに…それが恐怖の入口になるなんて皮肉ね。読んだあと、自分の口を意識せずにいられなくなるわ」

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