
【書籍レビュー】『さかさ星』――呪物と血筋が織りなす、因果と狂気の長編ホラー
作品概要
日本ホラー界の重鎮・貴志祐介による最新長編『さかさ星』は、「このホラーがすごい!2025年版」で国内編第2位に選出された注目作です。
貴志祐介は『黒い家』『クリムゾンの迷宮』『悪の教典』などで知られる人気作家であり、本作はその集大成的な仕掛けを備えています。
テーマは「呪物」と「家系」。古来より続く血筋にまつわる因果と、そこに潜む狂気が現代の人々を呑み込んでいきます。
あらすじ(ネタバレなし)
物語は、関西の山間にある古い名家を舞台に始まります。
名家に伝わる“さかさ星”と呼ばれる謎めいた呪物。その形は単なる装飾品のようでありながら、代々の当主たちに奇怪な死や不幸をもたらしてきました。
主人公はその血を引く若者。都市生活を送っていた彼は、ある事件をきっかけに実家に戻り、忌まわしい呪物と家系の因縁に直面することになります。
読者は彼の視点を通じて、過去の惨劇と現代の事件が交錯していく恐怖を追体験することになるのです。
恐怖の仕掛け
『さかさ星』の恐怖は、怪異そのものよりも、因果の連鎖と心理的圧迫にあります。
呪物が直接的に人を襲うのではなく、所有者や血縁者に不可避の災厄を引き寄せる。
この「逃れられない運命」が物語全体を覆い尽くし、読者の心に重苦しい影を落とします。
- 呪物の実在感:“さかさ星”の形状や質感が詳細に描写され、手に触れてしまいそうなリアリティを持つ。
- 家系の因縁:血筋という逃れられない宿命が、物語の緊張感を増幅させる。
- 緩慢な恐怖:派手な怪異よりも、じわじわと迫る不幸の積み重ねが恐怖を深める。
読後感と意義
本作を読み終えた時に残るのは「恐怖」と「諦観」です。
人間は自分の力で運命を変えられると信じていますが、血のつながりや受け継がれた呪物といった因果からは決して逃れられない。
その冷酷な真理を、貴志祐介は丹念な筆致で描き出しています。
『さかさ星』は単なるホラー小説ではなく、“人間存在の無力さ”を描いた文学的作品としても高い評価を受けています。
さらに、作中で描かれる人間模様や心理劇は、ホラーを超えてサスペンスや家族小説としての読み応えも十分。
貴志作品の醍醐味である「日常がじわじわ侵食される恐怖」が凝縮された一冊であり、ランキング上位に選ばれたのも納得の仕上がりです。

「呪物って物理的に壊せば終わると思ってたけど…“さかさ星”は血と結びついてるから逃げ場がないのが怖すぎる」

「代々受け継ぐ呪いって、一番残酷よね…。生まれた瞬間から運命が決まってるなんて、考えるだけでゾッとするわ」
© 2025 こわ!ブロ All Rights Reserved.