
【映画レビュー】『ドールハウス』――可愛いの表皮が剥がれる音を聴け
ログライン
“家”に置かれた一体の人形。微細な違和感を起点に、間取り・視線・記憶がズレていく。可愛いの裏にある「所有する恐怖」を描く邸宅ホラー。
美術とカメラ――間取りが語る物語
- 視線の通り道:廊下→居間→階段→子ども部屋が一直線に抜け、いつでも“誰かが見ている”導線に。
- 鏡面の多重化:姿見・飾り棚・テレビ画面が視線を反射し、人形の位置が“増殖”。
- パステル崩壊:前半の柔らかい色彩が、後半に寒色へ倒れて体温を奪う。
サウンドデザイン――音で心を削る
オルゴールのわずかな巻き戻り、床鳴りの周波数、ドアチェーンの金属音。生活音を微妙に遅延・反復させ、“ここにいるのは本当に一人か”という疑念を増幅。
テーマ読み――「愛玩」と「支配」
可愛いから手元に置く――その瞬間、私たちは対象を世界から切り離し、支配に転じる。人形は鏡であり、所有者の心の隙間を映す。
注目ショット(ネタバレなし)
被写界深度を浅く設定し、手前の人形にピント→奥の人影が“ピント外で”通過。見えたのに“見えていない”体験を再現する職人芸。
鑑賞ガイド&アドバイザリ
- 暗所/イヤホン推奨。微細な環境音が鍵。
- 不気味な人形・軽微なショック演出あり。

「“見られる私”と“見る私”の入れ替わり。人形はただの物じゃない、記憶の檻よ」
「“かわいい”って安心の合図なはずなのに、だんだん逆になるのが辛い…戻れない瞬間ってあるんだね」