
【映画レビュー】『きさらぎ駅 Re:』――都市伝説の“続き”を私たちは受け止められるか
作品概要
2000年代ネット掲示板の怪談「きさらぎ駅」を現代視点で再起動。駅ホーム、車内アナウンス、トンネルの残響――日本の“移動空間”に宿る不条理を、82分のコンパクトな語りで増幅する。
演出の核:トランジット・ホラー
- リズムの支配:車輪音やアナウンスが“生理的テンポ”を握る。途切れた瞬間、画面の静止が恐怖を倍加。
- 光の断絶:駅の白色灯→車内の暖色→トンネルの漆黒へと遷移するカラースクリプトが迷いを視覚化。
- スクリーン内スクリーン:スマホ画面の縦フレーミングを大胆に活用。現実の画面&虚構の画面を交互に見せ、実在感を攪拌。
物語の射程:匿名性と“検証欲”の罠
証拠動画・ライブ配信・スレまとめ――観客が慣れ親しんだ“ネット検証”の文法を逆手に取り、「確からしさ」が恐怖に変換されるプロセスを描く。都市伝説は事件ではなく、参加型の“手続き”なのだと示す野心的アップデート。
注目シーン(ネタバレなし)
無人の改札を抜けた直後、主人公のスマホに“圏外でも届く通知”。バイブの微振動だけで一気に心拍数を上げる、稀有なサウンド演出。
こんな人におすすめ
- POVやフェイク・ドキュメンタリーの臨場感が好き
- ネット怪談・実話怪談を“現代版”で味わいたい
- 短尺で濃い没入ホラーを求める

「“終点なしの路線”って、人生みたいで素敵。降りられないからこそ、見える景色があるのよ」
「電車って安全なはずなのに…“乗り続けるほど遠ざかる”感覚が一番怖い。次の駅、来ないの?」