
【ゲームレビュー】『The Bathhouse:地獄銭湯 Remake』――昭和レトロな浴場に潜む因習と怪異
作品概要
『The Bathhouse:地獄銭湯 Remake』は、日本のインディーゲーム開発チーム・Chilla’s Artが手がけた短編ホラーゲームのリメイク版です。
元作『The Bathhouse』は、2022年にSteamでリリースされ、昭和の銭湯を舞台にした独特の恐怖演出で高い評価を得ました。
本リメイク版では、グラフィックの向上、演出の強化、新規イベントの追加が行われ、より没入感のあるホラー体験が可能となっています。
舞台は懐かしいのに不気味さを漂わせる“銭湯”。日常的な空間が恐怖の舞台へと変貌する、そのリアルさが本作の最大の魅力です。
ストーリー(ネタバレなし)
主人公は、都市の疲れを癒やすために古びた銭湯を訪れた若者。
一見普通に見える銭湯ですが、夜が更けるにつれて異変が増していきます。誰もいないはずの浴場に聞こえる足音、湯船の奥から響く声、そして鏡に映る“自分ではない誰か”。
調査を進めると、この銭湯には過去に起きた悲惨な事件と因習が深く関わっていることが明らかになります。
プレイヤーは銭湯の裏に隠された真実を探りながら、恐怖と向き合うことになります。
ゲームプレイとシステム
『The Bathhouse:地獄銭湯 Remake』は一人称視点で進行し、銭湯の業務や探索を通じて物語が進展します。
シャンプーや桶の補充、脱衣所の清掃といった日常的な作業をこなす一方で、視覚や聴覚に訴える異変が少しずつ増加。
その「日常と非日常の境界」が曖昧になる瞬間こそが、プレイヤーを恐怖に引き込みます。
またリメイク版では、環境描写が格段に進化しており、湯気の表現や木造建築の質感がよりリアルになりました。
小さな違和感が積み重なり、やがて不可避の恐怖体験へと変貌していく構成は、まさにChilla’s Artの真骨頂といえます。
恐怖の仕掛け
本作における恐怖は、派手な演出よりも「じわじわと侵食する不安感」です。銭湯という公共空間でありながら閉鎖的な舞台設定が、恐怖を強調します。
- 音響演出:湯船の音や管の軋み、誰もいない空間に響く足音が背筋を凍らせる。
- 鏡と反射:鏡や水面に映る“異物”が、日常の空間を恐怖に塗り替える。
- 因習の影:土地や銭湯にまつわる古い因習が、物語をより深く不気味にする。
これらの要素が絡み合い、「ただ湯に浸かるだけの場所」が恐怖の檻へと変貌していきます。
プレイ後に残る余韻
本作をプレイした後、読者/プレイヤーの心に残るのは「懐かしさと恐怖の同居」です。
誰もが一度は訪れたことのある銭湯が、こんなにも異様な空間へ変わるという事実は、日常の風景そのものを歪めてしまいます。
リメイクによって描写のリアルさが増したことで、現実の銭湯に行くことさえ怖くなるほどの没入感を体験できるでしょう。
短時間で濃厚な恐怖を味わえる作品であり、ホラー初心者にもおすすめできる一方、ホラー愛好者には「見慣れた空間が一番怖い」という真理を改めて突きつけてきます。

「“湯に潜む何か”って、人間の無防備さを突きつける恐怖なのよね。水音ひとつで心臓が止まりそうになるわ」
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「銭湯ってリラックスする場所のはずなのに…こんなに怖い空間になるなんて。もう湯気すら不気味に見えるよ」